個人事業主としての独立や、新しいお店のオープン。希望に満ちたスタートを切るために、開業準備に奔走している方も多いのではないでしょうか。
しかし、やるべきことが多すぎて、つい手続き関係ばかりに目がいってしまいがちです。実は、開業後の事業をスムーズに軌道に乗せるためには、各種手続きと「同時」に準備しておくべき重要なことがあります。それが「売上管理の仕組みづくり」です。
この記事では、煩雑な開業手続きをチェックリストで整理しながら、安定した経営基盤を築くための売上管理・顧客管理の重要性と、その具体的な方法について分かりやすく解説します。
開業準備、手続きだけで満足していませんか?
いざ開業を決意すると、想像以上に多くの事務手続きが必要なことに気づきます。税務署への開業届の提出、事業内容に応じた許認可の申請、事業用銀行口座の開設、備品の購入など、リストアップするだけでも大変な作業です。
これらの手続きはもちろん重要ですが、それらを終えただけで安心してはいけません。なぜなら、これらはあくまで「事業を始めるための準備」であり、「事業を継続させるための準備」ではないからです。
開業したその日から、あなたはお客様と向き合い、売上を立てていく必要があります。その際に、「お客様は誰か」「いつ、どんなサービスが売れたか」「売上はいくらか」といった情報を、どんぶり勘定ではなく正確に記録し、次のアクションに繋げる仕組みがなければ、せっかくのスタートダッシュの機会を逃してしまうかもしれません。
なぜ開業前に「売上管理の仕組み」が必要なのか?
「売上の管理なんて、実際に売上が立ってから考えれば良いのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、開業前にこそ仕組みを整えておくべき、明確な理由があります。
慌ただしい開業直後の業務に集中するため
開業直後は、お客様への対応、サービスの提供、宣伝活動など、日々の業務に追われることが予想されます。そんな中で、売上管理の方法を一から検討し、導入するのは非常に困難です。あらかじめ仕組みを作っておけば、売上や顧客の情報をスムーズに記録でき、本来やるべき業務に集中できます。
正確な経営判断の土台を作るため
事業を成長させるには、データに基づいた客観的な経営判断が不可欠です。「どの商品が人気か」「リピートしてくれるお客様は誰か」といった情報を正確に把握することで、効果的な施策を打つことができます。最初の顧客データは、今後の経営を左右する貴重な財産となるのです。
スムーズな確定申告につなげるため
個人事業主にとって、年に一度の確定申告は避けて通れない業務です。日々の売上や経費をきちんと記録・整理しておかなければ、申告時期に膨大な時間と労力を費やすことになります。最初から管理方法を決めておくことで、日々の記帳が楽になり、節税対策にも繋がります。
【チェックリスト】開業手続きと並行して進めるべきタスク
ここでは、一般的な開業手続きと、それと並行して進めておきたい「売上管理」に関するタスクをチェックリスト形式でご紹介します。
1. 開業届・各種申請書類の提出
事業を開始するにあたり、まずは税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出します。青色申告を希望する場合は、「所得税の青色申告承認申請書」も同時に提出するとスムーズです。また、飲食店や理美容室など、業種によっては保健所などへの許認可申請が別途必要になります。
2. 事業用銀行口座の開設
プライベートのお金と事業のお金を明確に分けるため、事業専用の銀行口座を開設しましょう。これにより、日々の取引が分かりやすくなり、確定申告の際の経理処理も格段に楽になります。
3. ホームページやSNSアカウントの準備
現代のビジネスにおいて、オンラインでの情報発信は不可欠です。提供するサービスや商品の魅力を伝え、お客様に認知してもらうためのホームページやSNSアカウントを開設し、基本的な情報を整えておきましょう。
4. 見積書・請求書フォーマットの用意
取引が発生した際にスムーズに対応できるよう、見積書や請求書のテンプレートを準備しておきましょう。記載すべき必須項目(発行日、取引先名、金額、支払期日など)を確認し、自社のロゴなどを入れたフォーマットを作成しておくと便利です。
5. 売上管理・顧客管理方法の決定
そして最も重要なのが、このタスクです。売上や顧客情報を「どのように記録し、管理していくか」を具体的に決めます。Excelで管理するのか、専用のソフトやツールを導入するのか、自社の規模や業種に合った方法を選定しましょう。
スモールビジネスにおすすめの売上管理方法
売上管理と一口に言っても、その方法は様々です。ここでは、スモールビジネスでよく用いられる代表的な方法と、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
手書きの帳簿やノート
大学ノートや市販の金銭出納帳などを使って、手書きで売上を記録する方法です。最も手軽でコストがかからない一方、集計や分析に手間がかかり、情報の検索性も低いため、取引件数が増えてくると管理が難しくなります。
Excel(表計算ソフト)
多くのパソコンに標準でインストールされており、使い慣れている人も多い方法です。自分で好きなように項目を設計できる自由度の高さが魅力ですが、関数や計算式を間違えると正確な数字が把握できなくなったり、ファイルの破損・紛失のリスクがあったりする点には注意が必要です。
会計ソフト
簿記の知識がなくても、日々の取引を入力するだけで簡単に帳簿が作成でき、確定申告書類まで自動で生成してくれる便利なソフトです。経理処理は非常に効率化されますが、顧客一人ひとりの詳細な購買履歴などを管理するには不向きな場合があります。
顧客管理(CRM)機能付きツール
顧客情報(氏名、連絡先など)と売上情報(購入日時、商品、金額など)を一元管理できるツールです。顧客ごとのカルテのように情報を蓄積できるため、「誰が」「いつ」「何を」購入したかが一目瞭然になります。これにより、リピート促進のメールを送ったり、優良顧客を分析したりといった、売上アップに繋がる具体的なアクションを起こしやすくなります。
ホームページと顧客管理を連携させるなら「3do1」
開業準備としてホームページを作成し、さらに売上や顧客の管理も効率的に行いたい。そんなスモールビジネスのオーナー様には、ホームページ作成・顧客管理ツール「3do1(サンドイッチ)」がおすすめです。
「3do1」は、専門知識がなくても直感的に操作できるホームページ作成機能と、顧客管理(CRM)機能が一体となったクラウド型のツールです。すでにお使いの会計ソフトや専門の予約システムと連携・併用することで、その効果をさらに高めることができます。
例えば、ホームページのフォームからお問い合わせのあったお客様や、イベントに申し込んでくれた方の情報を「3do1」に蓄積。その顧客情報を元に、会計ソフトへの入力作業をスムーズに進めたり、外部の予約システムから得た顧客情報と統合して管理したりと、顧客管理の「司令塔」になってくれるでしょう。
ツールごとに情報が分散するのを防ぎ、顧客を中心とした効率的な事業運営を力強くサポートします。
まとめ:手続きと仕組みづくりを両立し、盤石な体制で開業しよう
今回は、開業準備における手続きと、見落としがちな「売上管理の仕組みづくり」の重要性について解説しました。
開業届の提出などの事務手続きは、いわば事業の「戸籍」を作るようなものです。それと同じくらい、開業初日から得られるお客様の情報や売上データを着実に蓄積し、未来の経営に活かす「仕組み」を整えることが、ビジネスを成功させるための鍵となります。
ぜひ本記事のチェックリストを参考に、手続きと仕組みづくりの両方をバランス良く進め、万全の体制で素晴らしいスタートを切ってください。
用語解説
開業届
正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。新たに事業を開始したことを税務署に申告するための書類で、事業開始から1ヶ月以内に提出することが定められています。
CRM (Customer Relationship Management)
「顧客関係管理」と訳されます。顧客の情報を一元管理し、その顧客と良好な関係を築き、維持していくための経営手法やツールのことを指します。顧客満足度と売上の向上を目指すために活用されます。
個人事業主
法人を設立せず、個人で事業を営んでいる人のことです。フリーランスや、小規模な店舗のオーナーなどがこれにあたります。